東京湾岸はシリコンバレー、木更津はその中核の都市へ!

早稲田大学経営大学院教授法木 秀雄 氏 (本市富士見出身)プロフィール

1945年生まれ、一橋大学経済学部卒業後、日産自動車に入社。以後、23年間日産自動車に在籍(在籍中、米国スタンドフォード経営大学院卒業)。北米日産副社長・ディレクターで退職。その後、BMWジャパン常務、クライスラージャパン代表取締役を経て現在に至る。 

はじめまして

水越)はじめまして、市長になって3年目。こんな時代に地域の舵取りをどうすればよいか、木更津出身でご活躍されている方々に、ふるさと木更津への思いから、今後の木更津の再生に向け、是非ともお知恵を頂戴できないかと考えておりました。今回は、第1回目にふさわしく、海外や大企業にいらっしゃったご経験を有する法木先生に、広い視野・観点からのご意見を頂戴できればと、どうぞよろしくお願いします。

法木)ありがとうございます。少しでも水越市長のお役に立ち、ふるさと木更津が元気になればと、こちらこそよろしくお願いします。さて、私は現在船橋に住んでいますが、ニュースを通じて、地価下落率が全国で一番だということ、木更津そごうの撤退など、暗い話題ばかりが報道され、大変心配をしています。やっぱりふるさとです、気になってしまいます。
私が子ども時代、近隣市から木更津を目指して、多くの人々が集まり発展してきましたよね。商店街も賑わっていました。
それが、モータリゼーションの進展とともに、郊外型の大型店舗が出展し、地域の中心核が大きく変わりましたね。私がいた日産自動車も工場をいくつもつくり、設備過剰という状況になってしまい、今日ではいくつも閉鎖しましたが、現在の木更津とオーバーラップしますね。木更津の伝統的な商店街も、今は再配置に向けた痛みの過渡期ではないでしょうか。 

木更津はシリコンバレーの中心市に位置

法木)私は、ちょうど20年ほど前にアメリカ・スタンフォード大学へ留学していました。その大学の周辺には、現在では大変有名な企業であるIBMやアップル、マイクロソフト等の半導体企業の集積地であるシリコンバレーがあります。地図に同じ縮尺で東京湾とサンフランシスコ湾を重ねてみると、サンフランシスコのダウンタウンが東京駅、品川がコンピュータ会社やベンチャー企業の集積地に位置し、東京湾アクアラインで陸続きとなった今、東京・川崎・品川と木更津の位置関係は、驚いたことに非常にIT産業の中心都市サンノゼと酷似しているんですね。位置的な見方ですが、木更津市はダイナミックに発展する可能性を、地理的な距離感から感じることができます。

水越)なるほど。そんなに似ていますか。

法木)市長もご存知のとおり、シリコンバレーは、サンノゼやサンフランシスコとも面的につながり、周辺の人々は、60キロ圏を行き来し、そして住居も頻繁に変えるなどダイナミックに動いています。刺激があり、情報もあり、居住者の国籍も様々。よく、シリコンバレーは「IC」で持っていると言われますが、ここで言う「IC」は半導体ではなく、インド人と中国人のことです。インディアとチャイニーズの起業が6から7割を占めるのです。外から人を受け入れることで、世界一発明の多い企業活動を生んでいる。木更津は、立地の特性からも羽田空港やアクアラインを活用したダイナミックな展開をすべきです。

水越)そうですね、アクアラインができて羽田には30分でいけます。 

インフラの品揃えはバツグン

法木)木更津市は、東京湾アクアラインにより対岸と大変近くなりましたよね。港も里山もある。かずさアカデミアパークもあり、清和大学や木更津高専などの教育機関もある。す立てや花柳界など江戸時代からの文化の蓄積もある。こんなに揃った地域は他にはないと思います。

水越)ありがとうございます。全くそうなんですよ。資源はソフトもハードも揃っているんです。そこで、国からは、首都圏業務核都市に位置付けられ、また重要港湾の木更津港を有し、国際会議観光都市の指定もされました。アクアラインや館山自動車道、圏央道など広域幹線道路も整備されています。また、良好な住宅地もあります。「木更津はやっぱり木更津だよ」と多くの方々に言われますが、これら資源を十分に活かしきれていないのではと感じています。

法木)私も実家が清見台にありますが、この都市的なインフラ整備は首都圏でも誇れますよ。 

対岸へアピールしましょうよ

法木)市民が当たり前と思うことでも対岸の東京・神奈川の人は知りません。もっと、木更津の売りをアピールしましょうよ。ホームページもポータルサイトとしての作り込みをした方が良いですね。絵や図で分かりやすいメッセージの伝え方はどうですか。

水越)市のホームページは、現在リニューアルをするための検討をしています。ぜひこの点を意識してつくりましょう。

法木)また、木更津の「名誉大使」を創設したらどうでしょうか。木更津を応援する地元出身者を「名誉大使」に任命し、あらかじめ名刺を作成し配布しておく。そして、ここぞというときに配ってもらう。東京、大阪、名古屋等で積極的にPRしてくれるサポーターを組織化していくものです。市長から大使メダルを授与するなど、シンボリックなもので遊び心を入れながら楽しんでもらえるような活動を展開したらどうでしょうか。大使とのレセプションを年に一回程度開催し、経費は会費制とします。例えば夫人同伴のパーティが良いですね。ボランティアの活動を披露するというイベントも加えて、市のニーズを上手く結び付け、運営の実行はNPOに任せて、行政はそこにわずかでも活動費を出す。全国に広がるキーパーソンに木更津への関心を高めさせる活動を一斉に展開してもらうのです。点ではなく面で広がるメリットがあります、どうでしょうか?

水越)大変ユニークですね。たしかに多くの方々の賛同を得られるアイディアだと思います。これはすぐに検討してみたいと思います。 

再生のカギは「モビリティの加速」と「動く人」

法木)木更津の再生のポイントは、対岸の地域や方々を対象とした「モビリティの加速」と「動く人」だと思っています。動く人は地元調達する必要はありません。能力のある個人や中小企業に来てもらい、ビジネスを成功させれば雇用も増えます。地元だけを対象とした施策の展開ではなく、対岸を取り込んだ広域的な取り組みをするべきです。

水越)確かに市内で起業するのは、チャレンジ精神を持った外から来た人が多いような気がしますね。やはり、新しい土地で起業しようと思う意欲が重要であると思います。

法木)また、独立行政法人になった木更津の工業高等専門学校の存在は大きいですね。例えば、対岸の型製作工場を誘致し、新しい成型技術や三次元の設計ソフト開発を高専の先生にサポートしてもらうのはいかがでしょうか。実際に工場を訪ね、どういう技術開発に苦慮しているか、どういうサポートを望むのか等、ヒアリングを木更津高専の先生と一緒にしたらいいです。チームを組み、首都圏の中小企業でブレークスルーしそうな会社やIPO(株式新公開)で上場しそうな会社に積極的に営業していくような、今までやっていないことをどんどんトライすべきですよ。

水越)最近、木更津高専が企業と連携し「木更津高専技術振興交流会」を設立しました。新産業という切り口からも、産学連携が進むことを期待しています。

法木)大変良いタイミングですね。木更津地域では木更津高専が事業化へのサポートを支援する、とPRできれば、複数社を誘致できると思います。その際、京浜地区の顧客と15分で往来できる立地特性をアピールし、固定資産税、法人税の減免などを用意し、例えば「特区」を申請したらどうでしょうか。小さな技術の集積から始めるのです。いきなり何もない所からの集積はありえませんし、やはり種を蒔くことが大事です。スタートしたら成功事例をマスメディアにどんどん書いてもらいましょう。

水越)やはり、PRの時代ですね。マスメディアを積極的に利用したいものです。

法木)そうです。東京湾を陸に捉えれば、川崎の15キロ東に木更津があります。市民も市職員も大きく意識を変えてもらいたいと思います。たったの15キロです。マスメディアには「本当に近いぞ!」という点を書いてもらいましょう。

水越)まだまだ、東京湾を越えていくのが木更津だ、というイメージを持たれていますね。

法木)そのイメージを払拭する活動を展開しましょう。テレワークセンターも十分使えます。対岸の起業家に来てもらい、ITビジネスの圏域として木更津で開拓してもらう。リスクはありますが、いかに意欲的な人・企業を誘致するかがポイントです。そこで、交通の利便性を活かした方策として、木更津で事業を展開する企業が、例えば、東京駅周辺に会議室等を確保でき活用できると、民間サイドではビジネスの開拓が容易になります。 

自衛隊との連携策もアイディア次第です

法木)他にもあります。自衛隊という組織や所有する土地の活用について、もっと市が公共的な協力を求めても良いのではないでしょうか。例えば、航空自衛隊に協力してもらい「全国模型飛行機大会」や「軽飛行機ショー」を連続1週間くらい開催すれば、全国の模型ファンや航空ファンが滞在し、旅館やレストランも賑わう。アクセス面では横田基地や調布飛行場の比ではないし、さほどお金をかけずに開催できる、本当に企画力だけで十分可能です。

水越)確かに連携策を検討する価値はありますね。

法木)実は、小学校6年まで当時米軍の管轄下にあった基地では模型飛行機大会が行われており、実に楽しみで毎年参加していたんです。その楽しい思い出があるから、どうして米軍にできて自衛隊ができないのかな、と…。

水越)自衛隊と地域住民とのコミュニケーションも一層深まりますしね。

法木)航空祭も大勢のファンが訪れるのだから、どうせやるなら継続して実施してもらいたい。

水越)そうすると木更津の街を見てもらう機会が増えてきますね。 

やはりセールスマンですね

本日は大変貴重なご意見を頂戴できました。他の地域と比較して非常に恵まれたインフラがあるのだから、上手に活用すること、そしてアピールすること、ですね。
これまでの行政マンの枠・域を出た発想が、やはり重要だと確信しました。地域の発展には、トップセールスマンにならないといけませんね。そして民間をはじめとする他の機関とのネットワークをどんどん形成していくことも不可欠ですね。
また、地の利を活かし、対岸地域とも絡んだ街づくりを推進する上で、特に「動く人、動ける人」の重要性を認識できました。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
今後とも、木更津市の発展にご支援をお願いします。